こんにちは。
先日(2024年8月21日)にリリースされた、米津玄師さんが歌う「がらくた〜JUNK」。
この曲は映画『ラストマイル』の主題歌として書き下ろされ、彼の6thアルバム『LOST CORNER』に収録されています。
「めちゃくちゃいい曲」「なんでこんなに胸に刺さるのか」「最近の一番好きな曲」「ラストマイルにぴったりすぎる」と多くのファンの方々がコメントを寄せています。
映画「ラストマイル」も公開されて約1ヶ月弱(2024年8月23日公開)ですが、観客動員数が271万人、興行収入も38.5億円突破ということで注目度の高さが伺えますね(9月17日現在、公式サイト情報)
先日やっと観てきましたー!
日々お世話になってる大型ショッピングサイトと重ね合わせながら観ていました。それでもしも映画のようなことが実際に起こったら私たちの生活はどうなるのだろう・・・って。
息つく間もないくらいの展開で、上映時間2時間8分が短く感じましたよ。
エンドロールで流れた米津玄師さんの「がらくた」が、さまざまな登場人物のことを歌われているようだし自分にも当てはまるようでもあるし、深く深く心に響きました。
今回は、米津玄師さんが歌う「がらくた」を映画「ラストマイル」と紐付けながら歌詞の意味を見ていきますね。
その前に、少しだけ映画「ラストマイル」のあらすじをご紹介します。
映画「ラストマイル」のあらすじって?
あらすじ
ブラックフライデーの前夜に届いた段ボール箱が爆発するという事件が発生。それは、世界規模のショッピングサイトから配送されたものだった。
この事件を発端にして連続爆破事件へと発展していきます。
舟渡エレナ(満島ひかり)は、着任したばかりの巨大物流倉庫のセンター長。またチーフマネージャーこと梨本孔(岡田将生)は、彼女とともに極悪な事態の収拾に携わることになる。
現代のライフラインの一つである物流。これが滞るとたちまち私たちの生活は、行き詰まってしまう。
この生命線ともいえる物流を止めることなく、謎を解き明かすことができるのだろうか・・・
⭐️この映画「ラストマイル」は単なるサスペンスではなくて、大河の流れに抗えない人たちの苦しみやひたむきに働くことが引き起こす心の闇のありさまを丁寧に描かれています。
ハラハラドキドキするような内容ですが、それにもまして豪華すぎるキャスト陣!!
この映画「ラストマイル」は、ヒットドラマ「アンナチュラル」(18)や「NIU404」(20)でタッグを組んだ、塚原あゆ子(監督)と野木亜紀子(脚本)が織りなす大ヒット作品です(現在進行形中)。
主演の満島ひかりさん、岡田将生さん、爆破事件に巻き込まれる阿部サダヲさんにディーン・フジオカさん。刑事役には大倉孝二さんや酒向芳さん(アナログ刑事役合いますね)。
なかでも日野正平さんと宇野祥平さんが演じる佐野親子の役どころが、とても素晴らしくて心に沁みました。
それから
ドラマ「アンナチュラル」からは、法医解剖医の石原さとみさん、同じく井浦新さん。葬儀社勤務の役に竜星涼さん。所長役に松重豊さん。
そして、ドラマ「NIU404」からは、機動捜査隊隊員役の綾野剛さんと星野源さん。
また9月になって中村倫也さんが出演されているとサプライズ発表がありました(重要な役柄でしたよ)
主役級の方々が多くてびっくり!
「映画に当てはめて考えると、ちょっと自分の実体験が込み入っているので、一見すると共通点が分かりづらいかもしれないですけど、映画に向けて大事な感覚を詰め込んだらこういう曲になったと感じています。」(米津玄師さんコメント文)
「がらくた」という言葉は「役に立たないもの」「無価値なもの」といった否定的な意味を持っているのですが、曲のメインテーマは「がらくたであることの肯定」であるのかなと思います。
社会的スティグマ(※)や無理解に対する問題にフォーカスを当てています。
社会的スティグマの意味は?
社会的スティグマ(social stigma)とは、特定の属性や特徴を持つ人々が、社会から差別や偏見を受けることを指します。これには、文化、人種、ジェンダー、健康状態、障害、社会階級などが含まれます。
例えば、心に苦しみを抱えている人々が「危険」や「怠け者」といった誤ったイメージを時として持たれ、社会から不当な扱いを受けることがあります。このようなスティグマは、個人の自尊心や社会参加に悪影響を及ぼすことがありますので、一人ひとりの理解と意識変革が大切になってきます。
「がらくた〜JUNK」の歌詞を詳しく!(「ラストマイル」のネタバレも含みます)
ここから歌詞の意味を見ていきますね。(ストーリーの内容の個人的な感想を含んでいます)
(大型倉庫のイメージです)
「どうしても僕らは
上手くできなくて
気がつけばからっぽに
なってしまった」
「ラストマイル」では、謎の爆破事件がブラックフライデー前夜に起き、センター長の舟渡エレナ(満島ひかり)とチーフマネージャーの梨本孔(岡田将生)が、この事件の謎に立ち向かいます。
エレナが統括する倉庫から出荷された物の中に爆弾が仕掛けられていることがわかり、エレナは職場に泊まり込んで事件の手がかりを見つけようとします。
いつ爆発するかわからない配送物を一刻も早く回収しなければいけない状況だったり、いつ誰がどこで何のためにしかけたのかのを解き明かさなきゃいけない焦りと恐怖感。
事件が起きたことによって、大型ショッピングサイト→物流センター→配送業者→委託業者→顧客へのイレギュラーな事態に対応していく難しさだったり、一つの歯車が狂うことによってこんなにも多くの人たちに影響があるんだってことがわかりました。
このフレーズのように、
うまくいかない状況が続くと心が空っぽになってしまうっていうのが、すごく伝わってくる内容でした。(阿部サダヲさんの演技からひしひしと伝わってきましたよ)
「失くしても壊しても
奪われたとしても
消えないものは
どこにもなかった」
このフレーズは、
たとえ失敗しても大切なものが壊れて、奪い去られたとしても、大事なものは自分の中に残っているって思いたいところなんですが、
”消えないもの”=”永遠に残るもの”は、どこにもないんだよと歌っているので、この世に作り出されているライフラインや形あるものはもしかしたら虚像ってことなのかもしれないです。
でもちょっと虚像という言葉は、合ってないかもですね。たぶん、形あるものはいつかは変化していくというほうがしっくりきそうです。
この世の中は多くの人の努力によって、均衡が保たれているという奇跡の状態なのかなって思いました。
「眠れない夜でも
鳴り止まないスヌーズ
踊り場で黙ったままいる2人」
明日のために寝なくちゃいけないけど、連絡報告が鳴り止まない状態。
このフレーズから、
映画の中でセンター長のエレナは職場に泊まり込んで、緊迫した状況を打開しようとしているシーンが思い出されました。
エレナは上司とのやり取り、部下への指示・・・どれをとっても完璧。
だけど、
エレナとチーフマネージャーのこうは、一緒に働き出してまだ日が浅いので信頼関係もまだ築けていません。
「何でもないと呟いて
噛み締め諦める痛みと
宙に浮かんでは
消える鼻歌」
このフレーズは、
本当は大丈夫な状況じゃないけど、強がって自分の中に押し留めようとする様子が伝わってきます。
心が壊れかけるような余裕がない感じ、映画の中に登場するさまざまな人に当てはまりそうですね。
満島ひかりさんの表情や仕草から、緊迫した状況がすごく伝わってきて、客席の私たちも身動きができないくらい臨場感が半端なかったです。
フウ〜
(出勤のイメージです)
「マイノリティ」
っていうのは、少数派という意味でその反対語はマジョリティ。
最近よく聞く言葉なので調べてみました。
マイノリティとマジョリティの違いって?
マイノリティ(少数派)
ある集団や社会の中で、数的に少ないグループや、少数の意見・立場を持つ人々を指します。マイノリティーは、時に社会的、経済的、文化的に不利な立場に置かれることがあります。例えば次のような使われ方をしますよ。民族的マイノリティー、性的マイノリティー、宗教的マイノリティーなど。
それに対して、
マジョリティ(多数派)というのは、
ある集団や社会の中で、数的に多いグループや、主流となる意見や立場を持つ人々を指します。マジョリティーは、一般的には社会的な影響力が強く、主導的な立場にあることが多いとされていますよ。多数の文化や価値観が、社会のルールや制度に反映されることがよくあります。
映画の中の印象的なシーンで、
大型物流倉庫へ大勢の人が出勤している映像がありました。
正社員やアルバイトの人たちが、セキュリティーチェックを受けてさまざまな部署に振り分けられてる光景・・・
そんな大きなところで働いたことがないので、あのシーンは衝撃でした。
大河のようなうねりの中で個人の存在価値さえも飲まれてしまいそう。
この大きな流れに逆らうものは脱落者となり、姿を消すことになる・・・まるで、「ラストマイル」のヤマサキのように。絶対あってはならないのに。
この歌詞を聴いたときに一番最初に思ったのが、こんな風に言ってくれる人がそばにいたくれるだけで幸せだなって。
「ラストマイル」の中のエレナと孔(こう)は、職場の上司と部下という関係でまだ出会って間もない関係。
お互いのことをあまりよく知らない時は、信じ合えなかったり疑いの心が生じたりするのは当然のこと。
二人で同じ問題を解決しようとする中で、徐々に2人の距離感が狭ばっていく様子がとても丁寧に描かれていました。
特に印象に残ったのが、エレナが孔(こう)に自分の過去の話を告白した時のこと。
以前精神に不調をきたし3ヶ月ほど休職していたことを打ち明けたシーン。責任感の強さと過酷な労働環境がプラスされると、どれだけのストレスがかかるのか計り知れません。
無差別連続爆破事件の対応に追われる中で、再び精神的に追い詰められていくエレナ。
でも、孔(こう)に告白することによって、少し自分にのしかかる重圧感から解放されたのかも。徐々にエレナは自分の弱さを認め、他人に助けを求めることの重要性を理解するようになります。
2人は恋人同士ではないですが、
「あなたがずっと
壊れていても
二度と戻りはしなくても
構わないから
僕のそばで生きていてよ」
なんだか2人はこのフレーズが合うような気がします。お互い相手にはずっと生きていて欲しい気持ちが溢れているし、強い信頼関係が結ばれてるんじゃないかって。
(荷物を配達しているイメージです)
ここでは少し視点を変えて、
「ラストマイル」の最前線で働かれてる佐野親子について見ていきますね。
日野正平さんと宇野祥平さんが演じる佐野親子(羊急便の委託ドライバー)は、個人事業主として物流業界の厳しい現実を象徴するような役どころです。
佐野親子は、配送業務を通じて生計を立てていますが、彼らの仕事は非常に過酷で、1つの荷物を届けるごとにわずか150円しかもらえません。さらに、荷物が受け取られなければ報酬はゼロです。
なんとも厳しい労働環境ですね。
映画「ラストマイル」のテーマである「物流業界の現実」と「労働者の苦悩」の姿を、佐野親子を介して知ることができました。
委託元のデイリーファーストの出荷停止命令や顧客からの荷物受け取り拒否など、上層部の決定がどれほど現場の労働者に影響を与えるんだろう・・・
「ラストマイル」(または「ラストワンマイル」)というタイトルの由来なのですが、物流や通信業界でよく使われる言葉だそうです。
商品やサービスが顧客に届くまでの最後の区間、つまり「最後の接点」を指してるので、実際の距離ではないんですね。
佐野さん親子のような最前線で働かれてる方々の対応が、お客様の満足度に直接つながるのでとても重要。
「どこかで失くしてものを
探しにいこう
どこにもなくっても
どこにもなかったねと
笑う二人はがらくた」
きっと、誇りを持って仕事をしていたはずなのに、
1日200件(配達個数)をこなすためには
お昼休憩もほどほどにお弁当を描き込むだけ。
せっかくお届けしたのに、爆弾が入ってるかもしれないと思われ受け取り拒否。
佐野親子の悲哀が表されてるなって思えるようなフレーズ。
もちろん、他のキャストにも当てはまりますが
「もういいかいもういいよ
だけどもう少し
長い夜を歩いていきましょう」
ここまでやったからもういいよ、って自分に言い聞かせるけど、もう一人の自分がもうちょっとだけやってみようよって。
すると休む時間も惜しんで、あと少し続けようって自分を追い込んでしまう。
そんな時ありますよね。
体が悲鳴を上げているのに、自分で自分に大丈夫大丈夫って。
「痛いの痛いの飛んでいけ
飛んでいけ飛んでいけ
明かりを消して」
少しくらい無理したって平気。
心や体に痛いところがあったとしても、”痛いの痛いの飛んでいけ”ってやってれば次の日には元気になる・・・でもそれって幻想かもしれない。
自分の心に蓋をして、自分をごまかしてる様子が伝わってきます。
小さな無理が積み重なるといつかはクラッシュしてしまう。
そうなる前に、自分の痛みを感じたら立ち止まってみるのも大事だと思う。
「許せなかった何もかも全てを
ずっとあなたを否定してきた
その全てを」
このフレーズから、安藤玉恵さんが演じる松本里帆役(2人の子供と暮らすシングルマザー)のことを思い出しました。
ここの歌詞は「あなた」を否定してきたとなってるので、ちょっとニュアンスは違うかもしれないのですが、今回は「あなた」を「じぶん」に置き換えて考えてみました。
子どもたちの朝ごはんの支度をして子どもたちよりも早く家を出るお母さん、家の片付けもできずに。
帰ってきても朝の状態のまま。
子どもたちともすれ違いが多くてうまくいかない。
松本里帆が夜遅く(おそらく母親に)電話をかけるシーンで、
「女としてもダメで、母親としてもダメ」といったような内容のことを愚痴っていました。
もう、いっぱいいっぱいで生活することに疲れている彼女の苦しみが伝わってくるような場面でした。
この映像を思い浮かべながら、このフレーズを聴くとより彼女の苦しみが胸に迫ってくるよう。
もしも、何かの原因で僕のことを忘れてしまっていたとしても、どうしても思い出せなくなったしまったとしても・・・
また出会って「はじめまして」から始めよう!
今までのように2人で恋をしよう・・・
このフレーズを聴いていて、春に観ていた「アンメット」(2024年4月〜放送)のドラマを思い出しました。
事故で脳を損傷し記憶障害に苦しむ河内ミヤビと、その彼女をすぐそばで見守る三瓶先生。
ミヤビは昨日までの記憶が翌朝になるとリセットされてしまっているので、日々つけている日記を読み返すことが日課に。
ミヤビは最終的には手術をするのですが、すぐ近くで見守る三瓶先生や病院の仲間たちのフォローがあったからこそ、ミヤビは辛い症状を乗り越え再生することができたんじゃないかな。
(仕事に疲れているイメージです)
「あなたは僕を照らした
月の明かりだ
笑わせるもんか
遠回りして帰ろう
迷い込んだっていいから」
君が周りからどんなふうに思われたって、僕にとってはかけがえのない大切な存在。
絶対に僕が守っていくって気持ちが伝わるようなフレーズですね。
米津さんの優しい気持ちこもった歌詞、ほんと素敵です。
「唇を噛んで滲んだ
血が流れていく
嫌いだ全部嫌いだ」
このフレーズは、社会における偏見やマイノリティに対する興味本位や不寛容さがあることへの悲しい気持ちを表しているかもしれません。
人と考え方が少し違っていることを自分の胸に秘めて言い出せない人や、人と同調することが難しくて、この世で生きていくのに生きづらさを感じてる人たち。
「ラストマイル」の映画の中のマジックワードってなあに?
企業理念の「すべてはお客様のために」という考え方。
この理念は企業にとって、とても重要なポイントです。
言い換えると、「カスタマーセントリック(customer centric)(顧客中心主義)」というのは、企業が何を提供したいかではなく、顧客が何を求めているかを出発点とするものです。
でもときには、この理念のように顧客のニーズを最優先するあまり、従業員や下請け業者に過度な負担をかける場面が見られます。(例えば、大手ショッピングサイト「DAILY FAST」から荷物を請け負っている羊急便のように)
この問題は難しいですね。「すべてはお客様のために」というマジックワードは、光と影の両面を持ち合わせているんですね。
※この素敵な歌詞の意味は、先述(1番のサビ)のところを参考にされてくださいね。
(微笑む2人のイメージです)
映画「ラストマイル」は、顧客のために働くことの意義や目的、その背後にある労働者の苦悩を描くことことによって、視聴者にもう一度再考してほしいと、問いかけてるかもしれないですね。
「どこかで失くしてものを
探しにいこう
どこにもなくっても
どこにもなかったねと
また笑ってくれよ」
私たちにとって大切なものや失ってきたものを探すけど、結局は見つからないかもしれない。
それくらいこの世には問題が山積み。
「上手くできないままで
歌う二人はがらくた」
この社会の中で、生きづらかったりうまく適合できなかったりするかもしれないけど、なんだかそれでもいいんじゃないかってこのフレーズから感じます。
人から「がらくた」って思われたって構わない。
自分らしくやりたいように生きていけたら幸せですね。
まとめ
今回は、米津玄師さんが歌う「がらくた」の歌詞を、映画「ラストマイル」をみた感想とともに見てきましたが、いかがだったでしょうか?
「そこの意味ってなんだか違うかも」と思われるところもあると思うのですが、「そういう受け止め方もあるのかな」と思っていただけると嬉しいです。
「ラストマイル」は緊迫感があって、とても深く考えさせられる映画ですが、クライマックスではちょっとほっこりするシーンもあり見応え十分ですよ。
ぜひ劇場に足を運ばれてみてくださいね(映画館は臨場感が凄すぎます)
そして、米津さんの歌。
どの曲も素晴らしくて大好きですが、この「がらくた」も私にとって大切な一曲になりました。
ぜひ一度聞いてみてくださいね!
最後までお読みいただきありがとうございました!